平成29・30年に改定された学習指導要領(以下、新学習指導要領)では、小・中・高等学校の全学校段階のほぼ全教科にわたって「持続可能な社会の創り手」の育成を視野に入れた教育目標が掲げられています。また、新学習指導要領では、小・中学校の「総合的な学習の時間」、高等学校の「総合的な探究の時間」についてこれまで以上に充実が求められ、「探究学習」は重要な教育活動として位置づけられました。
こうした動きを受け、本ラボでは、持続性科学(Sustainability Science)や環境工学、教育学の知見を反映させた探究学習プログラムを複数の中・高等学校のご協力の下で開発しました。このプログラムは、持続性科学の概念である「バックキャスト思考」を柱とし、気候変動や持続可能な開発目標(SDGs)などのグローカルなテーマや、地域社会の未来、そして生徒自身のキャリアについて探究学習を行いながら、「持続可能な社会の創り手」として必要とされる知識・資質・能力・意欲・関心・態度を育成するものです。
探究学習プログラムの教材・ワークシート・授業展開案をwebページで無償公開しておりますので、プログラムの実施検討や探究学習の参考にしていただければ幸いです。
この探究プログラムは、図に示すように、「単元①未来の考え方:バックキャスト思考」、「単元②気候変動と地域」、「単元③未来ワークショップ」、「単元④未来を変える政策のつくり方」の4つの単元で構成されます。
「単元①未来の考え方:バックキャスト思考」では、未来を考えていくためには必要不可欠なバックキャスト思考について、もう一つの未来の考え方であるフォアキャスト思考と比較しながら学んでいきます。
「単元②気候変動と地域」では、生徒たちの世代が直面する気候変動問題が地域にどのような影響を与えるのかや、それを緩和するための政策や技術について学んだうえで、地域の脱炭素に向けた道すじを体験できるアプリケーション(カーボンニュートラルシミュレータ)を使って、脱炭素に向けた取り組みを考えていきます。
「単元③未来ワークショップ」では、自分たちが住んでいる地域の2050年の予測(未来カルテ)から未来の課題を発見し、その課題を解決するために社会や自分たちは「今から何をすべきか」についてグループでアイデアを話し合っていきます。
「単元④未来を変える政策のつくり方」では、社会や制度を変えていくための政策の重要性を学び、未来の課題を解決するための政策案やその実現に向けたロードマップをグループで考えていきます。
これら4つの単元は、「未来からバックキャスト思考で考える」という点で共通しています。世界、地域、学校、個人という異なるスケールで、バックキャスト思考で「未来とつながる授業」になっています。
なお、これらの単元の組み合わせや具体的な中身は、生徒に身につけさせたい資質・能力、各学校の現状、教科教育の状況などに応じて自由にアレンジ可能です。実際に私たちが関わった実践校では、全ての単元ではなく一部のみ(例えば、単元③のみ、単元②③のみ、単元③④のみ)を実施する事例や、1つの単元①を複数学年に分けて学ぶ事例もあります。