「気候変動と地域」の単元でも述べましたが、他の先進国では若者が積極的に政策批判や社会運動に参加するなど、政治や政策、社会問題に関心を持つ若者が多くいます。しかし日本では「担い手として積極的に政策決定に関与したい」と思う若者が少なく、政治への参加意識、社会を変えようという意識が低いといわれています。若者が政策を語ったり、デモなどの社会運動に参加すると、批判されたり、叩かれたり、茶化されたりする風潮もあります。また、子ども議会などのイベントを開催する自治体もありますが、政策や制度についての生徒の理解がないままでこうしたイベントを実施しても、具体性や実現可能性の低いアイデアの留まることが多くなり、実際に実現に至る例はそれほど多くありません。そうした状況が繰り返されれば、「提案しても何も変わらない」と若者の政治参加への意欲はますます低下します。そうしたなか、2016年に日本では選挙権年齢が18歳に引き下げられ、学校現場でも主権者教育や政策教育を行うことが求められています。
本単元では、まず政策や制度、政策手法について生徒の理解を深めます。そのうえで、政策課題や目標を定め、既存の政策のレビューを行うなど、グループで政策立案プロセスを体験していきます。最終的には、政策の妥当性をチェックしたうえで、具体的で実現性も高い政策とロードマップを作成し、首長や行政に対して政策提言を行います。
これにより、政策や制度、社会問題に関する知識の習得、データや根拠に基づいて論理的な判断を行おうとする思考力や判断力、多面的、総合的に解決する方策を考える課題解決力、政治や政策、社会問題に関心を持ち、主権者として積極的に政策決定に関与しようとする主権者意識の醸成につながることが期待されます。また、グループワークではコミュニケーション能力や合意形成能力、発表会ではプレゼンテーション能力の向上も期待されます。
第1回:未来を変える政策のつくり方
政策・制度とは何か、政策をどのように作るのか、どのような政策手法があるのかなどについて学ぶ。
第2回:政策課題・目標の設定と情報収集(グループワーク)
どのような課題に対する政策を考えるのか、政策目標は何かを設定し、目標と現状のギャップや既存の政策などについて調べる。
第3回:具体的な政策手法の検討(グループワーク)
政策課題や目標に合わせて適切な政策手法を考える。考えた政策について政策のチェックリストを使って妥当性を検証する。
第4回:政策実現に向けたロードマップの作成(グループワーク)
政策目標を達成するために、政策の実施時期や実施者、具体的な実施内容を考え、政策実現にむけたロードマップを作成する。。
第5回:発表準備(グループワーク)
発表会に向けて、スライドやポスターなどの準備を行う。
第6回:政策発表会
作成した政策案をスライドやポスターで発表する。