地域人材育成・キャリア教育ラボ芝浦工業大学 地域共創基盤研究センター

単元③未来ワークショップ

単元の背景

 日本の人口は、2008年をピークに減少に転じ、2060年までに毎年80万人以上の人口が平均的に失われていくとされます。併せて高齢化も進んでおり、高齢化率は2050年には総人口の37.7%になると予想されています。生産年齢人口が減少する一方、介護・医療ニーズの増大、道路・公共施設等のインフラの老朽化、農林業の衰退による農地や人工林等の荒廃、人と人のつながりの希薄化等地域は多くの課題を抱えています。こうしたなか、地域の持続可能性を今後どのように確保していくかが課題となっています。
 地域の持続性を考える上で重要なこととして、将来の地域を担う人材の育成があります。従来の学校教育は、学習指導要領に規定された全国一律の教育内容の学習が中心であって、地域の現実から遊離しがちであり、「中央に出ていく地方の人材を選抜する制度」として、学校は「地域を捨てる学力」をつける「人口流出装置」になっているという指摘すらありました。しかし、新学習指導要領では、人口減少下での地域課題の解決に向けて、学校と地域社会とが連携・協働して子どもたちを育む「社会に開かれた教育課程」を掲げたうえで、学校教育の正課の中で地域社会の抱える様々な課題を理解し、関連する情報を収集し、その解決に向けた方策を他者と協働しながら考えることによって、生徒自身の生き方や地域貢献につながっていくことが目指されています。

単元の内容とねらい

 本単元では、このままの傾向が続いた場合の2050年の地域の姿を予測(投影)した「未来カルテ2050」を使って、地域の未来の課題を理解し、理想とする未来の地域の姿とのギャップを解消するには、今から何をしなければならないか、をバックキャスト思考で探究していくものです。また、課題抽出や解決策の検討では、グループワークを通じて、対話・熟議を重ね、協働することの重要性も学びます。以上のように本単元は、アクティブ・ラーニングの側面を持ちます。
 これにより、地域社会が現在抱えている問題の中から自ら課題を見出して、多面的、総合的に解決する方策を考える課題解決力や、課題に対する正確な知識・技能とともに、データや根拠に基づいて適切な判断を行おうとする思考力や判断力を生徒が身に付けていくことが期待されます。また、グループワークではコミュニケーション能力や合意形成能力、発表会ではプレゼンテーション能力の向上も期待されます。

授業計画例(4時間)

第1回:2050年の地域-未来カルテ2050-
 「未来カルテ2050」などのデータをもとに、このままの傾向が続いた場合の地域の未来の姿を学ぶ。
第2回:未来の地域課題の議論(グループワーク)
 第1回の授業を踏まえ、未来の地域が抱える課題や地域の強み・弱みなどをグループに分かれて議論し、模造紙と付箋紙を使って整理する。
第3回:課題解決に向けたアイデア検討(グループワーク)
 第2回の授業を踏まえ、未来の地域が抱える課題を解決するために、今から何をしなければいけないかをグループに分かれて議論し、模造紙と付箋紙を使って整理する。
第4回:アイデア発表会
 第3回で整理された課題解決のアイデアを発表する。

未来カルテ2050について

 未来カルテ2050は、国立社会保障人口問題研究所の人口予測と2000~2015年の各種統計データの傾向を踏まえ、このままの傾向が続いた場合の2050年の地域の姿を予測(投影)したものです。市区町村ごとに、人口、人口構造、産業構造、保育・教育、医療・介護などについての未来予測した結果が示されます。未来カルテは、当てることを目的とした予測ではなく、未来に向けた政策の必要性を気づくための予測です。本単元では、生徒が自分たちが住んでいたり、学校が所在する地域について、未来の課題やその解決策を考え、議論するための基礎資料として使用します。
 未来カルテはExcelファイルで作成されており、全市区町村分のデータを以下のサイトで無料で公開しています。
 未来カルテ2050ダウンロードサイト:https://opossum.jpn.org/未来カルテ2050/ 

 

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